日本ではN響クラスのプロの楽団のプレーヤーや
指揮者が着ている以外はあまりお目にかからない燕尾服。
舞台には魔物がすんでいるように
指揮者が登場するとたちまち会場に魔法がかかります。
メインのサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン」で
交響曲としては初のトップサイド(首席奏者の補佐)
の役目をおおせつかった私だったのですが、
最後の譜めくり(その間、ヴァイオリンは刻みと格闘していた)
が終わると、まもなく魔法がとけることをより
はっきり実感しました。
いつもはのんびりした雰囲気の中にいるのですが
指揮者との距離が近い分、すてきにみえたのでしょう。
途中でいきなりビオラにOKサインを出してきた指揮者に
かなりドキッとしながらも、私はしっかりと返事を返していました。
曲の最後に弓を上げた瞬間、スカっとしましたが
他の団員より右手の位置が高かったのはちょっと恥ずかしかったです。
舞台の上ではすてきに見えた指揮者も
燕尾服を脱いでしまえば元に戻ってしまいます。
それはシンデレラが夜中12時の鐘が鳴って
元の姿に戻ってしまうのを連想させます。
燕尾服の魔法は恐るべきもの、といってよいでしょう。
でも毎日あるとありがたみがないのかもしれません。