山の神 [2007年08月03日(金)]
ワアアアアアアアオ。
オーう マイ ガーッ
マッキンリーに近づくと、
乱気流に巻き込まれて、セスナは激しく揺れ始めました。
乗客たちは 大パニックです。
マッキンリーの峰をなめるように旋廻し、谷をすり抜けます。
すぐ後ろの座席のおばさんが、ブラウン飛行士に
あなたもっと安全に飛行しなさいみたいに必死に訴えていますが。
チョイ悪なブラウン飛行士は、調子に乗って
いつもより余計にグルグル回ってるようです。
こっちは、よく考えたらジェットコースターもダメなのに
こんなリアルでハイリスクな アトラクションは、完全に無理です。
酸欠にくわえて 振動による飛行機酔いで、
もう目を開けることができない。
勇気を出して、ほんの少しだけ目をあけると
岩肌がありえない距離で真横にあって、気持ち悪い。
ああ気持ち悪い。
チョイ悪パイロットは、気持ち悪乗客 を励ましつつも、
セスナはマッキンリーを5週くらいして、ふもとの氷河に着陸を試みます。
ガツ。ガツ・ガツ。ダダダダダダ・・・
滑走路ではなく、氷の上に軟着陸するときは、
着陸失敗したか・
と思うほどの衝撃に、心臓が止まるくらいの緊張が走ります。
神様・マジ助けて。
乗客たちのなかには、その恐怖に涙している人さえいました。
降り立ったアラスカの氷河は、黒くて汚かった。
本来、1年間にほんの数センチのみ移動するはずの 氷の流れは、
地球温暖化の影響で 年間数十メートルも流され、地表面を削り、
イメージしていた ブルーの氷ではなくて、
灰のような色をしていました。
っていうか、やっぱ寒いって。
マイナス10度では、耳も手も凍てつくよ。
目眩も吐き気もすっかり吹っ飛び、出発です。
帰途はブラウン飛行士と お話しをしながら飛びました。
彼は、自分の尊敬する冒険家 植村直己をよく知ってたそうです。
ナオミは、ずっと帰ってこないんだ。
マッキンリーで植村さんが遭難して20年。
ブラウンが駆け出しのパイロットだったとき、ちょうど彼も捜索に出た。
しかし見つからなかった。
それ以来、マッキンリーにフライトする度に、
途(みち)すがら どうしても彼の姿を探してしまうそうです。
お前も、ナオミのようにクールな(男前な)日本人になれよ。
ブラウンにそう言われましたが、
まだまだ 達成していません。
マッキンリーフライト編
終