『ひらめきとイノベーションの授業 未来のために僕たちが今やるべきこと』 慎 泰俊 [2013年06月22日(土)]

どちらかというと好きではないのです。
読んでいていい気分にならないというか、当然のことをさも新発見のように言っていたり、方法論を少し述べそれ以上にそのシステムに気が付くまでどれだけ苦労したかを武勇伝さながら語っていたり、誰にでもできるような紹介のされ方でいて、実際は特別な才能が必要だったり。
でも、ひらめきと創造には興味があったし、本自体が薄いし、たまには良いかと思って読んでみました。
読んでいて、やっぱり・・・と思ったところもあるのですが、ひらめく素質のようなものはどんな人に宿るかを考えるいい機会でした。
「新しいものを作ろう!」という強烈な思い。
やっぱり精神力なのだけど、それにしても準備は必要ということです。
後は、運のようなものも必要。
こちらもある程度呼び込む力でもって、こっちに寄せうるもの。準備のうちにはいるか。
アンテナ高く、努力せよ。
人事を尽くして天命を待つ。
『安心毛布』 川上 未映子 [2013年06月21日(金)]

『発行地帯』シリーズで、『安心毛布』は第3弾。
第2弾は『魔法飛行』というのだそうで、先にこちらが目に入ったのでそちらはまだ読んでいないけど、いずれ、そちらも。
このエッセイ集の中で、「何のためでもない場所から」というのが、とても好き。
好きという言い方しかできないのが歯がゆい。
特に、「幸せになりたい」と思う気持ちにも、おそらく多くの人が幸せになりたいと思っているからだと思う。・・・・・のあたりが川上さんらしく、強く共感する。
川上さんは、・・・・・だから自分が本当に幸せかどうかはさておき、人から「幸せそう」と思われないと不安になって、やがてそれは「幸せでなくちゃいけない」強迫観念に変わってしまう。と書いている。
このあたりが私はうまく言えないけど、よく言ってくれました!的な感動。
そして、川上さんが考える強くて美しい女性についても、深く感銘を受けた。
CHICKENSHACK Z [2013年06月18日(火)]
『セロ弾きのゴーシュ』 影絵・藤城清治 原作・宮沢賢治 [2013年06月05日(水)]

そこでゴーシュは、セロを毎日持ち帰り、1人で練習を始める。
毎日夜中まで、朝方まで。
狂ったように弾き、グッタリして何を弾いているかわからなくなるまで、ゴウゴウゴウゴウ・・・・・。
ある日練習中のゴーシュのところへ、三毛猫がセロを聞かせてくれと頼みに来る。
次の日はカッコウが、子ダヌキが、ネズミの親子が・・・・・。
ゴージュのゴウゴウゴウゴウは、下手だけど、動物たちには歓迎されていたのです。
宮沢賢治のお話も藤城清治さんの影絵も、穏やかな感じがして良いです。
お話の舞台は、ついつい岩手県のどこかの町と考えてしまうのですが、すぐに外国のお話のような、未来の話のような、昔話のような、不思議な世界にスイッチするのが、宮沢賢治の魅力です。
影絵がそれを助長して、より曖昧な魅力あふれる絵本。
子ダヌキがかわいい。
他の動物もかわいい。
そして、1人で練習もいいけど、練習に付き合ってくれる誰かがいると上達も早い♪
『猫の事務所』 宮沢賢治・作 黒井健・絵 [2013年06月03日(月)]

表紙の絵が暗い。
みんな黒い服を着ているし、何か良からぬことを企む事務所なのかと思ったのですが、それも違いました。
・・・が、近い!
猫の事務所とは、猫の歴史と地理を調べる小さなお役所です。
事務長が1匹と書記が4匹いて、この表紙には四番書記がいません。
4番書記は寒さに弱く、夜は竈の中で眠るので体が汚れていているが故に竈猫と呼ばれ、他の猫たちから嫌われているのですが、事務長が黒猫なので、普通なら選ばれないところ、みんなに尊敬される書記に選ばれたのでした。
竈猫は仕事はするし、他のものぐさな猫に気を使って何かをやってあげようとするのですが、嫌われているのでアクションを起こすといじめられます。
それがわざとらしかったり、嫌みっぽかったりするなら、いじめられることもあるかなと思うのですが、なんでもない、ただ落ちたものを拾ってあげただけなのに!
読めば読むほど竈猫がかわいそうになります。
そう、この絵本はいじめや差別について書かれた本なのです。
そして、この絵本の中では事務所がなくなる他は何も解決されずに終わります。
悲しい事実が悲しいまま未来へ引き継がれることを、何とかして止めたいと願う宮沢賢治の姿が見えたような気がしました。
『ぶどう酒びんのふしぎな旅』 影絵・藤城清治 原作・アンデルセン 訳・町田仁 [2013年05月30日(木)]

藤城さんがアンデルセンが大好きであることは、那須高原藤城清治美術館を訪れたときに知りましたが、モノクロでは十分表現しきれなかったとしても、80歳を過ぎて自分の作品を新たに作り直すとは!
すごいパワーだなと思いました。
若い!
どのページも驚きます。
アンデルセンのお話は、1本のぶどう酒の瓶が、最初は少女の婚約の席のぶどう酒の瓶として日の目を見るのですが、捨てられ、拾われ、船で旅をし、手紙を託されたり、倉庫に忘れ去られたり、種を積められたり、空から放られたり・・・・・、と旅をします。そのいろいろなシーンで少女やその婚約者と接しているのだけど、それはぶどう酒の瓶にしかわからない、といったお話。
読み終わってすぐは、切なくなるような、どうにもやりきれないような気持ちになったのですが、おそらく私の周りにもよくあることなのだろうなと、何気ない日常をゆっくり見回してみようという気持ちになりました。
きれいな本です。
少女の服のレースや公園でのお祭りの様子が特にきれいです。
『銀河鉄道の夜』 宮沢 賢治 [2013年05月24日(金)]

岩手県へ行くと、お土産などにもモチーフとして取り上げられているの多く見かけるので、お土産にしてもイベントにしても違和感を感じていました。
また読んでみようかな?と思った動機は思い出せない。
たまたま見かけただけです。
そうそう、こんなだった、と思いながら読み進めました。
この本に関しては、1ページごとに星座の写真が文字の背景のようになっていて、目次で星座も紹介しています。
はっきりした印刷ではないのだけど、銀河鉄道に乗っているかのようでおもしろい。
読んでいて思ったのは、はっきりとした形や色が思い浮かぶ美しいお話だったんだな、ということ。
結末を知っているけど、時々ふわっと悲しくなるけど、美しい銀河を旅するお話。
本を読みながら想像するものは読み手によって違うのだろうけど、心地よさの度合いは一緒じゃないかな。
宮沢賢治自身の優しい人柄に包まれるような穏やかな感情が湧いてきて、「友達を失う悲しいお話」と記憶をした当時の自分は、酷い悩みでも抱えていたのだろうか?
この美しさを感じられなかったから、それ以降読まなかったのかもしれません。
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