★★★★★伯爵令嬢であるフローラは1つ上の美しい姉フローレンスと何かにつけて比べられる存在。
かつては伯爵家の美貌の姉妹を薔薇にたとえていたのに、フローラはある事件のため、社
交界どころか実の両親にさえ、隔てを置かれた存在になってしまった。
その事件というのは、幼いフローラが誘拐され、しばらく後に娼館で発見されたというもの
だ。
そんなフローラは人並に嫁ぐことも叶わないと、結婚も諦めている。
ところが、ある日、父が賭けに負けた代償に、姉フローレンスを若い実業家に差し出すことに
してしまう。
姉は子爵に嫁ぐのを楽しみにしている身であったため、フローラが姉の代わりに嫁ぐことに
なり−。
以上があらすじですが、この若い実業家が実は昔、誘拐されたフローラを助けた貧民街の
少年でした。
二人の縁はこのときから始まっており、強引に妻にさせられたと思いこんでいたフローラも次
第に彼を好きになってゆきます。
読後感もよく、無理な展開もなく、すらすらと最後まで読めました。
フローラが嫁がされた実業家が実は昔、出逢ったことのある少年だった−、
というのは、フローラの貴婦人としての名誉が傷ついた事件、
物語りの進行上の伏線として効果的だと思うのですが、
もう少しだけ、他にも話の展開に盛り上がりというか、意外性を添えるエピソードが
あっても良いのかなと思い、そこだけが少し物足りないようにも思えました。