泌尿器科学の専門ジャーナルに、ノコギリヤシによる前立腺肥大症関連症状への働きと、(前立腺がんマーカーである)PSA値への影響を調べた臨床研究が、イタリアのグループから報告されていました。
(
Arch Ital Urol Androl. 2012;84:117-22.)
男性では、加齢に伴って前立腺肥大症(BPH)による排尿障害などの症状が生じます。
良性疾患である前立腺肥大症に対して、サプリメントでは、
ノコギリヤシ(学名serenoa repens)が用いられています。
一方、高齢男性における悪性腫瘍に、前立腺がんがあります。
高齢者では健康診断でのスクリーニング検査として、PSA値(前立腺がん特異的マーカー)が測定されます。
ノコギリヤシの摂取によるPSA値への影響を想定する考えがあります。
ただし、
理論上の話であり、臨床的に問題なったケースは知られていません。
今回の研究では、あらためて、
ノコギリヤシの前立腺肥大症(BPH)に伴う下部尿路症状への作用、および関連指標への影響が検証されています。
具体的には、
イタリアにおける多施設共同研究として、
2010年9月から2011年11月の間に、
BPHおよび下部尿路症状を有する患者で、
PSA値が10 ng/ml未満であり、先行する前立腺生検が陰性であった被験者を対象に、
1日あたり、320mgあるいは640mgのノコギリヤシエキスが投与されました。
被験者は、298名の男性で、平均年齢63歳、平均PSA値は5.4 ng/ml、前立腺平均容積は57 ccでした。
介入は、
ノコギリヤシ単独投与、あるいはαブロッカー薬との併用です。
アウトカムとして、3ヶ月及び6ヶ月の時点での質問票による調査が行われ、
PSA値、IPSS(国際前立腺症状スコア)、IIEF-5(国際勃起機能指標)、
経直腸的前立腺超音波検査での評価も行われました。
解析の結果
まず、PSA値は、上昇することはなく、安定した推移を示しました。
PSA値が4 ng/mL未満であった被験者では、投与後にPSA値は低下しています。
(PSA値が高値の人が低下すると、偽陰性になってしまうので問題ですが、この研究では、PSA値がごく低い範囲の人だけで低下傾向となっています。)
尿流速計での指標は、両群(ノコギリヤシ単独投与群とαブロッカー併用群)において類似した変化であり、
平均中央値および最大値において、緩やかな改善傾向を示しました。
重度の症状を呈していた患者の割合は、顕著に減少しています。
IIEF-5スコアは、6か月後の追跡期間では特に変化は示されていません。
超音波検査では、ノコギリヤシ投与によって、炎症所見の改善が認められました。
以上のデータから、
ノコギリヤシ投与による前立腺肥大症に伴う症状の改善作用、
ノコギリヤシは副作用が少なく安全であること、
PSA値に対しては、有意な変化を及ぼさないこと、またPSA低値に対してはむしろ低下作用を示すことが示唆されます。
ノコギリヤシは、多くの臨床試験によって有効性が示されており、安全性の高いハーブです。医薬品と比べても副作用が少なく、広く推奨できるサプリメント成分です。
前立腺肥大症(BPH)は、勃起障害(ED)の原因ともなりますし、
BPHの治療に用いられるαブロッカーや5-α-還元酵素阻害薬といった薬の副作用として、EDが生じるリスクもあります。
一方、ハーブサプリメントでは、ノコギリヤシが、軽症から中等度のBPHの症状改善に有用であることが、これまでに多くの臨床研究によって示されています。
DHCでは関連製品として、
ノコギリヤシ、
マカ、
トンカットアリ、
複合サプリメント
などがあります。
ノコギリヤシに関しての臨床試験や基礎研究では、次のような報告があります。
ノコギリヤシの安全性を示した臨床試験
・ノコギリヤシによる前立腺肥大症と勃起障害の症状改善作用
・前立腺の健康維持にはノコギリヤシ+リコピン+セレン
・ノコギリヤシによる細胞増殖抑制作用
・ノコギリヤシによるBPH症状改善作用
・ノコギリヤシの前立腺肥大症改善作用
・前立腺切除術前のノコギリヤシ投与の効果
・ノコギリヤシ複合サプリによる慢性前立腺炎改善効果
・ノコギリヤシ・カボチャ種子による前立腺肥大症
・前立腺切除術の出血にノコギリヤシは影響しない
・ノコギリヤシでは医薬品との相互作用報告はなし
・男性型脱毛症とノコギリヤシ
・ノコギリヤシの安全性に関する系統的レビュー
・前立腺炎に対する補完療法としてのノコギリヤシ
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