今月の臨床栄養学の専門ジャーナル(電子版)に,エクストラバージンオリーブオイルでのフライ食品(揚げ物)によるインスリン抵抗性の改善作用を示した臨床研究が,イタリアのグループ(Catholic University of Sacred Heart, Rome)から報告されていました。
(
J Med Food. 2010 Dec 13.)
近年の研究によって,肥満やメタボリック症候群に対しては,食後の過血糖を抑制する低グリセミック指数(GI)や低グリセミック負荷(低GL)の食事が有用であることが示されています。
GIやGLは,同じ食材やエネルギー量の食事であっても,炭水化物のバイオアベイラビリティや調理方法によって異なることが知られています。
そこで,今回の研究では,肥満と非肥満の女性を対象に,エクストラバージンオリーブオイル(非加熱(生)あるいはフライ調理によるエクストラバージンオイル)を含む炭水化物食の働きが検証されています。
具体的には,一晩の絶食後,インスリン抵抗性を示す肥満女性12名(BMI;32.8±2.2kg/m(2))と非肥満女性5名(BMI;22.2±1.2kg/m(2))が,無作為に次の2群に分けられました。
食事A:60グラムのパスタ(小麦粉)と,150グラムのグリルしたズッキーニに25グラムの非調理エクストラバージンオリーブオイルを添加した食事。
食事B:15グラムのエクストラバージンオリーブオイルを含む150グラムのフライ(揚げ物)のズッキーニ,10グラムのエクストラバージンオリーブオイル,60グラムのいためたパスタの食事。
(食事AとBは,いずれも25グラムのエクストラバージンオリーブオイル含有。また,いずれも150グラムのりんごを含有。)
摂取前と,食事3時間までの30分毎に,血糖値,血中インスリン,Cペプチド,中性脂肪が測定され,AUCが算出されました。
解析の結果,肥満女性の被験者群では,食事Bよりも食事A摂取後のほうが,CペプチドのAUCが有意に大きな値を示しました。
(120 分後; [Wilcoxon sign rank test]=27.5, P=0.0020, 150分後;W=26.5,P=0.0039, 180 分後 ;W=26.5, P=0.0039)
(つまり,食事Aのほうが,炭水化物負荷によるインスリン分泌刺激が大きいことになります。)
一方,非肥満の被験者では,有意差は見出されませんでした。
以上のデータから,インスリン抵抗性を示す肥満女性では,エクストラバージンオリーブオイルによる調理食のほうが,(等カロリーの非フライ食よりも)食後のインスリンやCペプチドの低下(=糖負荷の軽減)という点で好ましいことが示唆されます。
日本では,一般に,2型糖尿病の食事指導で,エネルギー量/カロリーベースの食事療法が説明されます。
(つまり,低カロリーで低脂肪の食事が推奨されます。その結果,低脂肪の麺類・ご飯・炭水化物食をとって,血糖コントロールが不良な患者がたくさんいます。)
血糖コントロールのためには,摂取総カロリーの制限ではなく,糖質制限のほうが効果的なのは明らかです。
また,長期的には,体にいい油を摂取することが重要ですので,通常の調理オイルとして,エクストラバージンオリーブオイルの利用が推奨できます。
その他,同じカロリーでも,食事の順番や調理法によって,食後血糖値は大きく変化します。
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